本記事では、シリケンイモリの飼育・繁殖方法を詳しく解説し、さらにアカハライモリとの違いをわかりやすく整理していきます。
シリケンイモリの飼育についてのまとめ
最初に結論から書きます。シリケンイモリの飼育はアカハライモリより簡単です。成体の場合はアカハライモリもシリケンイモリもほぼ差はありませんが、幼生、幼体の飼育はシリケンのほうがずっと簡単です。
このため、産卵、繁殖させたい方はシリケンイモリやアマミシリケンイモリをおすすめします。さらに、シリケンイモリはアカハライモリよりも人に慣れやすいという特徴があります。
とくにアマミシリケンイモリは人によく慣れる傾向が強く、上陸したての幼体でも人工飼料をよく食べる個体が多いです。
テラリウムで飼育する
ただし、シリケンイモリは陸棲傾向が強く、テラリウムで飼育すると良いでしょう。テラリウムと言っても赤玉土を湿らせておけば大丈夫です。コケなどをつかってイモリウムを作るときも、陸地を多めに作ってあげると良いでしょう。ただ、シリケンイモリでも個体によっては水中に潜るのが好きな個体もいるようです。
第1章:シリケンイモリとは?基本情報
日本に生息するイモリといえば、本州から九州に広く分布するアカハライモリが有名です。
しかし、南西諸島に行くと、アカハラとは違った姿を見せる**シリケンイモリ(Cynops ensicauda)**が暮らしています。
シリケンイモリは「アマミシリケンイモリ」と「オキナワシリケンイモリ」に大きく分けられ、地域ごとに微妙な特徴の違いもあります。
- 学名:Cynops ensicauda
- 和名:シリケンイモリ(尻剣イモリ)
- 名前の由来:尾が刀(剣)のように細長く尖る姿から
- 分布:
- アマミシリケンイモリ(奄美大島・徳之島など奄美群島)
- オキナワシリケンイモリ(沖縄本島・慶良間・久米島など)
- 体長:最大15〜18cmとアカハラより大型
- 寿命:10年以上(飼育下では15年を超える例もあり)
✅ その大きさと存在感から、アカハラとは一味違う魅力を持つイモリです。
第2章:アカハライモリとの違い
シリケンイモリとアカハライモリは一見よく似ていますが、飼育や観察をしていくと多くの違いが見えてきます。
● 体の大きさ
- シリケン:最大18cmとかなり大型
- アカハラ:通常8〜12cm程度
● 体色・模様
- シリケン:腹側がオレンジ~赤色で、斑点やまだら模様が入りやすい。背中に赤色のスジが入る。オキナワシリケンイモリは背中に金箔模様が入る個体もいる。アマミシリケンイモリは金箔がないが、CB個体の場合赤みが強くなり全身オレンジの個体も出やすい。オキナワシリケンイモリは色彩変異個体はほとんど出ない。
- アカハラ:背中側は黒、腹が鮮やかな赤一色で、比較的模様が少ない。稀に背中の色が緑や薄いグレー、オレンジなど色彩変異個体も出てくる。
● 生息地の違い
- シリケン:南西諸島(奄美〜沖縄)に限定
- アカハラ:本州〜四国・九州と広範囲に分布
● 生態傾向の違い
- シリケンイモリ:陸棲傾向が強い
- 水辺にはいるものの、上陸して活動する時間も多い
- 陸地を用意した飼育レイアウトが必須
- アカハライモリ:水棲傾向が強い
- 一生をほとんど水中で過ごす個体も多く、水槽飼育では水中スペースが重要
● 繁殖期
- シリケン:3月〜8月と比較的長い
- アカハラ:春(3〜5月)が中心
✅ このように、シリケンは陸を好み、アカハラは水中を好むという大きな違いが、飼育方法にも影響してきます。
第3章:シリケンイモリの飼育環境
● 水槽サイズ
- 成体は大型化するため、最低でも60cm水槽が理想
- 単独飼育なら45cmでも可能だが、ゆとりを持つ方が観察しやすい
● レイアウト
- 陸棲傾向が強いため、陸地:水場=6:4 くらいの割合がおすすめ
- 陸地には流木や石を配置し、隠れ家を確保
- 水場は浅めでもよく、フィルターを使い清潔さを維持する
● 水質・温度
- 水質:弱酸性〜中性(pH6.5〜7.0前後)を維持
- 温度:20〜26℃が適温。夏場は**高温対策(冷却ファン・エアコン)**が必須
● 餌
- 幼体:トビムシ、アブラムシ、グリンダルワームなど小型の生き餌
- 成体:イトミミズ、冷凍アカムシ、人工飼料(ひかりウーパールーパーなど)
- 陸棲傾向が強いため、ピンセットでの陸上給餌もよく行われる
第4章:シリケンイモリの繁殖について
シリケンイモリは、飼育下でも繁殖可能な両生類です。
ただし、アカハラと比べて繁殖期が長く(3〜8月)、環境づくりに工夫が必要です。
シリケンイモリも繁殖のためにはクーリングは必要です。クーリングとは、冬季に気温を下げることで繁殖を促す手法です。完全に冬眠させるのは負担なので、冬季はヒーターを設置しないなど温度を15度程度に下げて発情を促します。クーリング期間は2週間から1か月程度で十分です。シリケンイモリは寒さに弱いとされていますが、関東地方以南であれば屋内無加温で飼育できます。
● 求愛行動
- 繁殖期になると、オスがメスに近づき、尾を振ってフェロモンを放出する「尾振りダンス」を行います。
- この行動に反応したメスがオスの精包を受け取り、受精が成立します。
● 産卵
- メスは水中の水草や人工水草の葉に、1粒ずつ卵を産みつけるスタイル。
- 卵は透明のゼリーに包まれ、1回の繁殖で数十個産卵することもあります。
● 孵化
- 水温22〜24℃前後で管理すると、2〜3週間ほどで孵化。
- 孵化直後の幼生は外鰓が目立ち、オタマジャクシのような姿をしています。
● 幼生の餌
- ブラインシュリンプは塩水性で不適切。
- 代わりに ミジンコ、グリンダルワームの細片、イトミミズの小片 など、淡水で生きる餌を用意します。
- 幼生は動く餌にしか反応しにくいため、生き餌中心で与えると成長が安定します。
第5章:飼育・繁殖の注意点
シリケンイモリは魅力的ですが、飼育にあたり注意すべき点がいくつかあります。
● 水質・温度管理
- 高温や水質悪化に非常に弱い種です。
- 夏は冷却ファンやエアコンで温度を管理し、定期的な換水を徹底することが長期飼育の鍵です。
● 多頭飼育のリスク
- シリケンは比較的穏やかですが、餌不足や繁殖期にはケンカや共食いが発生することも。
- 繁殖目的でペア飼育する場合でも、十分なスペースと隠れ家を用意しましょう。
第6章:まとめ
- シリケンイモリの基本情報
南西諸島に生息する日本固有のイモリで、アマミ・オキナワの2系統が存在。最大18cmと大型で寿命も長い。 - アカハラとの違い
シリケンは陸棲傾向が強く、アカハラは水棲傾向が強い。この違いは飼育レイアウトに直結する。 - 飼育のポイント
陸地を多めに確保した水槽レイアウト、20〜26℃の水温管理、清潔な環境が必須。 - 繁殖の特徴
繁殖期は長く、オスの尾振り行動から受精、そして水草への産卵が行われる。幼生期の餌付けは生き餌が基本。 - 注意点
採取は厳禁。必ずブリード個体を入手し、環境と法律を守ったうえで飼育すること。
✅ 結論
シリケンイモリはアカハラに比べて大型で、陸地を必要とする飼育が特徴的な種です。
繁殖も可能ですが、幼生期の餌付けや温度管理に難しさがあるため、しっかりと知識を持ったうえで挑戦する必要があります。
👉 アカハラをすでに飼育している人にとっては、**「違いを楽しみつつ新しい魅力を発見できるイモリ」**と言えるでしょう。
コメント